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小平での住民投票が問いかけるもの

2013年5月26日(日)、住民からの直接請求による都内初の住民投票が小平市で行われた。都内初ということに加え、小平市長が、投票率50%に満たなければ不成立とするという改正条項を後付けしたこともあり、マスコミに大きく取り上げられ、全国的にも注目が集まった。結局、5月26日の住民投票の投票率は35.17%で、小平市は住民投票は「不成立」として、開票しないままである。

1.小平都市計画道路3・2・8号府中所沢線計画の是非を問う

住民投票の対象となった「小平都市計画道路3・2・8号府中所沢線」は、1962年に計画決定された。現在、東京都が事業認可を得て、土地買収を始めようとしているこの51年前の都市計画道路について、「住民参加により計画を見直す」べきか、「計画の見直しは必要ない」かのどちらかに○を付け、投票するというのが、今回の住民投票だった。

小平3・2・8号線1.4kmの計画線上には、市民の憩いの場である小平中央公園横の雑木林や、玉川上水の緑道がある。計画線のすぐ東を府中街道が通っており、両者の距離は、一番離れている南の部分で約220m、一番近い北の部分で約60mである。この計画について初めて知ったとき、すぐそばに府中街道があるのに、なぜわざわざ市民の憩いの場である雑木林をつぶして新しい道路をつくるんだろう、と大変疑問に感じた。(図参照)

2.住民投票に至るまで

雑木林の木が倒される光景を想像すると、何もせずにはいられなくなり、2008年4月に「都道小平3・3・8号線計画を考える会」を立ち上げた(注:2012年11月の都市計画変更で、計画道路幅が標準28mから標準36mに広げられ、計画道路の名称は3・3・8号から3・2・8号に変更された。真ん中の数字は、計画道路の幅によって変わる)。会として、まず取り組んだのは、計画の根本的見直しを求める署名活動だった。2009~2010年にかけて、3回にわたって計画の見直しを求める署名6,000筆弱を東京都と小平市に提出した。それでも、計画はまったく変わらない。

 2011年11月には、小平市議会に「小平都市計画道路3・3・8号府中所沢線に関し、市民が参加して話し合いをする」場の設置を求める請願を提出し、12月に全会一致で可決された。それを受けて、小平市は2012年4~5月に「小平3・2・8号まちづくりワークショップ」を開催したが、その報告書は、出された意見の羅列で終わり、参加した市民が意図したような「市民案」のまとめのようなことはできなかった。

 東京都がいよいよ今年度中に事業認可申請を出そうとしているらしいと聞いた2012年の春、小平市民の意見を計画に反映させるには何をするのが一番いいのか、「都道小平3・3・8号線計画を考える会」のメンバーで話し合い、住民投票に取り組むことを決めた。2012年10月に市内の他団体にも声をかけ、「小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会」を結成した。

3.住民投票の実施と成立要件

 実際に住民投票を行うには、住民投票を行うための条例案をつくり、地方自治法の規定に従って、その条例案に賛同する署名を市内有権者の50分の1以上から、1か月以内に集めなくてはならない。

 1か月で、市内有権者の50分の1にあたる3,000名弱の署名を集めることができるのか、不安を抱えながら2012年12月17日より署名を集め始めた。始めてみたら、予想以上に反応はよく、必要数の2倍以上の7,183筆の有効署名を集めることができた。

 署名集めの次には、市議会で住民投票条例案を可決する必要がある。市議あてに条例案への賛成を求めるハガキを送る作戦などを展開し、3月27日の市議会本会議では、賛成13・反対8・退席6で住民投票条例案は何とか可決された。

 可決まではよかったが、その後、4月7日の市長選挙で再選された小林市長が、4月24日の臨時市議会で、住民投票に投票率50%の成立要件を付ける改正条例案を提出し、市議会で可決されてしまった(賛成13、反対13で、議長裁決で可決)。

 その結果、5月26日に実施された住民投票は、投票率50%を超えなければ無効ということになり、私たちは毎日街頭に出て、投票への参加を呼び掛けた。結果は投票率35.17%で、小平市は開票しないまま今に至る。

4.民主主義の実現を求めて

 開票されないままの現状に、市民として納得できない思いが残る。

 都市計画道路の建設計画に対して、住民の意思が反映されないことに対する不満から、住民投票の実施までこぎ着けた。これに対し、行政は一貫して住民投票の実施に否定的な姿勢を貫いてきた。住民投票の実施を求める条例案を市議会に提出する際、小林市長は、「東京都の事業に支障をきたす恐れがある」と、否定的な意見を付した。4月7日の市長選で再選された後に開催された臨時市議会で、小林市長が真っ先に行ったのが、住民投票に投票率50%の成立要件を付す改正案の提出だった。市側は、改正案提出の理由として、「住民投票の結果に信頼性を持たせるため」と強調したが、提出の背景には、東京都からかなりの圧力があったと言われている。

 市議会の在り方にも、疑問を感じた。3月27日に住民投票条例を可決したまではよかったが、4月16日にその条例が施行されてからわずか8日後の4月24日に、50%の成立要件を付した市長提案の改正条例を可決してしまった。その一方で、開票を求める市民の請願に対しては、「一度議会で決めたことだから」とそっぽを向いてしまう。市議会へのロビーイング活動を通じて、市民の意見を代弁すべき議員の投票行動は、実際には市民の意向よりも、上のレベルの党の意向や、他会派や行政との駆け引きで決められてしまう実態が見えてきた。国政レベルでの選挙協力が市議の投票行為に大きく影響し、あるいは、投票行為が行政との取引条件にされてしまう。そこに、一般市民の意向が入り込む隙は、わずかしかない。

 法政大学教授で、「原発国民投票の会」の共同代表を務める杉田敦氏は、同会主催の住民投票についてのシンポジウムで、「行政は、住民投票という形で民意が示されることを恐れる」と指摘された。新潟県巻町で原発建設の是非をめぐって、あるいは徳島市で吉野川可動堰の建設をめぐって行われた住民投票では、建設反対という民意が、住民投票によって示され、結果としてそれらの建設は阻止された。

 巻町の笹口元町長は、1996年に行われた同町の住民投票では、市内有権者の53.73%が原発反対の意思を示したのに対し、町議会では原発推進派の議員が過半数を占めていた、とシンポジウムで語っていた。議会という間接民主主義の場がきちんと民意を示すことができないとしたら、民主主義の主役である市民の意思を明確に示す手段として、住民投票などの直接民主主義の手法は決定的に重要な意味をもつ。行政はそれを恐れる。

 小平で行われた住民投票の投票率は35.17%だったが、そこには、小平の都市計画道路3・2・8号線に対する市内有権者51,010人の意思が示されている。その民意を封じ込めたままにしておくことは、やはりおかしい。


(水口(原子)和恵/ 会員、小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会共同代表)