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映画に観る原発問題2「100,000年後の安全」

使用済み核燃料の世界初の永久地層処分場建設


フィンランドで建設中の核燃料の放射性廃棄物最終処分場を取材したデンマーク・フィンランド・スウェーデン・イタリア合作の映画である(2009年製作、日本公開2011年)。

フィンランドでは原発が4基稼働しており,1基が建設中である。同時に今、フィンランドのオルキルオトでは世界初の高レベル放射性廃棄物の永久地層処分場の建設が壮大な計画で進められている。核燃料の「直接処分」である。世界で話題になったのは、10万年間保持できるように設計されているからである。

放射性廃棄物を金属製の容器に封じ込め地下約500mに永久貯蔵される。一定量になると施設は封鎖され、二度と開けられることはなくなる。2015年完成、2020年稼働の予定で、すでに地下430mまで掘削された現場の映像は巨大な地下都市のようである。3万年後には新たな氷河期が到来する。そのあと生きている人々にどう伝えるのかの検討がされるが、そのとき今の言語は通じるのかも真剣に議論される。

10万年間貯蔵するというわけではなく、子や孫の代から人類の生存している間はもとより永久に隔離しておこうというのである。施設の入口には「危険!近寄るな!触れるな!」と表示されるようだ。映画の制作にあたったのは原発のない国を含めた4か国の制作会社である。デンマーク人のマイケル・マドセン監督のメッセージを掲載しよう。

未来のみなさんへ
ここは21世紀に処分された放射性廃棄物の埋蔵場所です。
決して入らないでください。
あなたを守るため、地中奥深くに埋めました。
放射性物質は大変危険です。
透明で、においもありません。
絶対に触れないでください。
地上に戻って我々より良い世界をつくってほしいのです。
幸運を。        

<日本の動き、世界の動き>

この映画は、核燃料廃棄物の世界初の最終処分場建設のドキュメントであるが、日本や世界の動きはどうなっているのであろうか。

日本では、使用済み核燃料については「直接処分」方式は採用せず、再利用する「核燃料サイクル」方式の計画が45年間にわたって進められてきたが行き詰っている。投じられた金額は約19兆円。青森県六ヶ所村に再処理施設を建設中であるが延期が重ねられ、高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)も15年間失敗の連続である。これらのコストは電気料金に上乗せされている。ようやく2012年8月になって政府は、「核燃料サイクル」だけではなく「直接処分」も選択肢に含めることを方針化した。

「核燃料サイクル」は、使用済み核燃料を再処理してプルトニュウムとウランを再利用するという方法であり、原発再稼働・増設の論理が前提になっている。「直接処分」の考え方は、脱原発か原発依存かについては中立であり、既に存在する原発施設の廃炉に伴う使用済み核燃料を直接、最終処分するという方策である。今後、原発比率をゼロにすれば当然全量直接処分となる。

この問題を考える上で役に立つ情報がある。月刊誌「世界」2012年8月号所収のプリンストン大学教授フランク・フォンヒッペル氏の寄稿文「増殖炉開発・再処理から『乾式貯蔵』に進む世界」(10頁)である。それによると、増殖炉建設・再処理(核燃料サイクル)に取り組んでいた国のほとんどはそれを放棄し、使用済み核燃料を水で冷やす「乾式」で「中間貯蔵」している。現在OECD加盟国で増殖炉の研究開発費を報告しているのは日本だけである。プルトニウムを再処理し移動することは、プルトニウムがテロリスト・グループの手にわたりやすくなる、核兵器利用の危険がある、などの指摘をしている。

また、米原子力規制委員会(NRC)は2012年8月7日、原発の新設や運転延長の認可に関する最終決定を凍結することを決めた。中間貯蔵の安全性などに関する検討が不十分であるというのがその理由である。最終処分場については、スウェーデンやドイツも最終処分場(直接処分)建設を計画しているとの情報がある。スウェーデンは2009年処分地に中部のフォルスマルクを選定、2025年稼働を目指しているという。米国ではオバマ大統領就任後、ネバダ州ユッカマウンテンの最終処分場建設計画を撤回しているが代替計画は決まっていない。

日本は核燃料サイクル構想を改め、全量直接処分に切り替えるべきである。また、原発敷地内に一時しのぎに中間貯蔵している使用済み核燃料の安全性について、貯蔵プールの冷却が途絶えた際の放射能漏出の危険性が指摘されており(国会事故調)、早急に総点検し対処すべきである。
直接処分にしても、地震多発国である日本では特に安全性の確保が絶対的な条件である。緻密な計画と情報公開システムをつくり、国民の監視の下で進めるべきである。



(文:緑川)