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映画に観る原発問題「イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘」

ウラン採掘から始まる放射能汚染の実態


原発の燃料として使われるウランを鉱山から採掘する際、処理困難な放射性物質を大量に生み出していることを訴えるドイツ映画である(2010年制作、2012年日本公開)。


スタッフは5年にわたって世界各地のウラン鉱山と精錬場を取材した。イエロー・ケーキとは、ウラン鉱石を精製して出来るウランの黄色い粉末のことである。まず、旧東ドイツ南部のヴィスムート社のウラン工場。かつては従業員12万人、世界第3位の産出量であったが、東西ドイツ統合後に生産は停止された。しかし、鉱山の残土や粉塵が放射性物質を含むことが40年間も明らかにされていなかった。廃坑後、ウラン採掘会社は放射性廃棄物処理の会社に変わった。周辺に放出された2億トンの放射性汚泥。元従業員の高い肺がん発症率。映画では、閉山後旧露天鉱に16年間放射性廃棄物を運び続けている元鉱員を取材する。危険地帯に指定されてはいるが、いまだに解決方法は示されていない。

このほか、カナダ、ナミビア(アフリカ南西部)、オーストラリアを撮影拒否にあいながら取材している。ウラン採掘の町ではそれで生活している人々の安全であるとの発言、反対運動する人々の怒りの声が集録される。ヨアヒム・チルナー監督は「私はこの映画でまさしくモラルとお金の問題について挑発したいという気持ちがありました。利潤追求のなかでモラルがまったく無視されているということがやはり一番問題だと思います。普通の人たちがこの問題を考えられるような描き方をしたかったのです。例えばヘリコプターで25分間ナミビアの鉱山の上を通る映像だけでも、人々はすごくショックを受けて、こんなことはやってはいけないと感じることができると思うのです。」と言っている。

「無知は罪悪である」が一つの真理であるとすれば、映画の出来栄えはともかくとして撮影や取材の拒否に合いながらの5年間の労苦の上で作り上げたこの唯一のドキュメンタリーは、ウラン採掘の放射能汚染を知るためには多大な存在価値がある。原子力発電所があり、日本のような地震多発国でもなく、事故もなかった国の普通の人たちにも脱原発の意識を促すことができるかも知れない。チルナー監督が利潤追求のなかでモラルが全く無視されていると説明を加えなければならない現実をどのように改革するのか。これが次の課題である。

なお、ウランの人為的な核分裂による原子力は質量と共存するエネルギーではなく、「共存在」ができないとの見解がある(池田善昭編著「自然概念の哲学的変遷」世界思想社2003年)。つまり、原子力エネルギーは自然と人間との共存ができないということであろう。ウランと原子力については、経済、倫理、哲学、科学など総合的な評価が必要である。


(文:緑川)