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「家づくり体験談-我が家の場合」
― 納得の木の家 ―(事例1)

18年で住めなくなった! 建て売り住宅

 私鉄の小さな駅から徒歩4分、鉄道開通にともなって開発された800世帯ほどの住宅地。敷地は約55~60坪、6m道路で区画整理され、駅に近いわりに静か。難点は地形上、北斜面で南側の隣家が50cm~120cm高いこと。18年前、マンションと古家を売って5千数百万円で手に入れた建て売りの我が家。

 10年が過ぎて、6月の蒸し暑い日、換気孔の付近に羽アリをみつけた。付近にしろありが、うようよいるではないか……。早速、業者に調べてもらうと、床下にはダンボールや煎餅の袋、木くずなどが捨てられ、そこにシロアリがびっしり!驚いたと同時にこれは人災だ!と怒りがこみあげてきた。施工業者(相鉄建設)の相談窓口に苦情を申し出ると、「床下の消毒を無料でします」という。むしろ床下の「ごみ」をきれいに取り除いてほしかったのだが……消毒は人体への害が心配だからと即座に断った。

 さてどうしようか?いろいろ考えた末、換気孔に外から家庭用殺虫剤をまいた。何回かそれをやっているうち、羽アリはいなくなり、数年が過ぎた。ところがその間じわじわと着実に、しろありは床下の根太や柱を食い荒らし、我が家を蝕みつづけていたのだ。

 東側の和室は南の窓はあるが陽当たりが悪く、暗いので10年前に東側に窓をつけた。しかし通気性の悪い押し入れには困っていた。シロアリを見つけて5年後、その和室の押し入れの床にびっしりついたシロアリをみつけた。リフォーム業者に畳の下を点検してもらう。
 なんと、土台の太い木は薬の効力がまだ残っていたのか、原形をとどめていたが、根太はすっかりシロアリにやられて跡形もない!その時の驚き、怒り、その上の畳に毎日寝ているのだ。

 床を張り替えた。畳も新しくした。それでも、快適な眠りは戻ってこない。夜中に何 度も目がさめ、熟睡できない日が続く……

 一難去ったが今度は柱だ。柱にはすべて塗料が塗ってあり、中の木を隠している。水まわりの洗面所と台所の柱を点検してもらう。塗料を剥がすと、中の木はがらんどうで何と原形をとどめていない。すっかりシロアリが食っていた。家を支える柱がスカスカでは、地震でもあったらひとたまりもない。

これが何と、18年しか経過してない相鉄建設の建て売り住宅の実態なのだ!

2~3年考えた末、立て替える決断をした

 ここを壊して立て替えるか、別の土地を選ぶか迷った。環境への影響を考えると土台さえしっかりしていれば、修理して住むのがベストである。立て替えると壊す時、建築廃棄物が出ることで環境負荷は避けられない。しかし、土台がこんな状態ではどうしようもない。今の住環境に劣らない土地を探してみたが容易に見つからない。

 駅から徒歩4分、18年の間に培った友人との交友関係、安全な食べ物を購入できるネットワーク。ここには野菜をはじめ牛乳や醤油、肉や魚から加工食品まで生産者と直結する関係ができていた。家族の健康を守るためにも、このネットワークは捨て難い。「住む」ということは住環境だけでなく、住む人たちのコミュニティも大切だ。それは生活の質にもかかわってくる。

業者との偶然の出会い

 まずは住宅展示場を見て、メーカー選びをと思っていた矢先、友人宅をたまたま訪問。お宅に一歩、足を踏み入れてみて直感した。この大工さん(相模原市・土屋工務店)に我が家を建ててもらいたい!
 なぜそう思ったか……柱は檜、床は少なくとも寄木の張り合わせではなく本物の一枚板である。壁にクロスはない。体をふわっと包む、木の優しさ、何とも居心地のいい空間なのである。

 人は木の感触を求めるという自然の習性を満たそうと木目模様のポリ塩化ビニルの床材や壁材が横行するなかで、久し振りに味わった本物の風格と感触……。そういえば、私が育った神戸の家は昔、宮大工が建てたそうで、45年たっても少しのくるいも出なかったのを思いだした。

 住宅展示場を見ることなく業者さんは決まった。このあまりに性急な決断が間違っていなかったことを、その後時を追って再確認することになる。

土台と基礎、骨組みにこだわって

 家に求めるものは、まず健康を維持できること、シックハウス症候群を引き起こす住まいなどもっての外である。家族が精神的にも肉体的にも癒され、安らぎを得られるすまい。最近こういう宣伝が頻繁にされているようだが、何を根拠に言うのか疑問である。新建材と化学物質で出来たすまいは人を癒すどころか人を殺しかねない。

 土台には殺菌効果のあるヒバ材を使ってもらう。もちろん青森のヒバである。そのため、シロアリ駆除剤は最低限におさえることができたが、国民金融公庫は利用出来なかった。薬品を使用しなければ、公的資金は借りられない。これは国と業者が結託してのことか?と大いに疑問を感じた。

柱はすべて国産の檜を使用、大黒柱は直径21cmの通し柱が使われている。

 建前は15~16人の大工さんが一日かけて一気に柱を立て、屋根に野地板を張り、柱が雨にかからないよう細心の注意をはらいながらの作業である。骨組みができたわが家の壮観なさまに感激して見とれていると棟梁が“この瞬間のためにこの仕事をやっているんだ”。柱の多さと、重厚な骨格に我が家ながら驚嘆。

 床材はナラの一枚板。2階の子どもたちの部屋は張り合わせにした。天然木は足への感触はいいが、案外弱く、傷がつきやすいことがわかった。

 壁は、クロスはまったく使わず、玄関、リビング、洗面所からトイレまですべてしっくい壁である。しっくい壁とは天然の藻土が原料で塩ビの壁紙の10倍以上の吸湿力がある。つまり塩ビの壁紙は調湿性、吸湿性がほとんどないので結露、カビやダニの発生を招く。

適正な価格

 ここまできてさぞかし価格がべらぼうに高いのではないか?と心配になるのも無理もない。ところがそんなことはない。総工事費のうち基礎、骨組みの木材は加工費用も含めて約25%。この部分の材料を吟味しておけば、安全、健康、耐久性がクリアできる。システムキッチン、洗面台、風呂など個々の設備は予算に応じて考えれば良い。我が家は坪約70万円ほどで収まった。

 家は住む人を暑さ、寒さといった自然の気候風土から守り、地震や洪水などの自然災害から守るものであり,住む人の健康を損なうものであってはならない。要するに家は土台と骨組みが大事であり、屋根や壁、中の設備などは取換えがきくものだ。

 疑問があれば何でも聞ける。どんな注文も相談にのってくれる。その信頼関係が何より必要なのである。相手をみて手ぬきをする、そんな業者は避けよう。誠実で理念をしっかりもった業者を見つけよう。つまるところは人と人の信頼関係である。

(2003年4月 文責:矢野郁子)