コーヒーを“心から”おいしく飲むために
コーヒーの世界での1日あたりの消費量は約20億杯にもなるという。おいしいコーヒーを求めた話題性の多い食品でもある。産地は貧しい途上国であることから、フェアトレード・コーヒーや環境と安全性の視点からオーガニック・コーヒー(有機珈琲)を求める消費者も増えている。
また、昨年、「おいしいコーヒーの真実(BLACKGOLD)」という映画が公開され話題になった(DVDレンタルあり)。筆者もコーヒー党で毎日欠かさず楽しんでいる。ベースはオーガニックで時々フェアトレードが加わるという飲み方であるが、もう少しフェアトレードを増やさなければいけないと思っている。
1. 映画「おいしいコーヒーの真実」
まず、映画の話から。アフリカ最大のコーヒー生産国エチオピアを舞台に、コーヒーの生産農家の実態や流通の状況が描かれている。コーヒーがエチオピアの輸出収入の67%を占め1500万人の生活を支えている、という説明が冒頭にされるが、次第にそれが「生産者の生活を支えていない」ことがわかる。コーヒー生産農家の貧しい切迫した生活実態が浮き彫りにされる。
ニューヨークとロンドンで決められる市場価格によって生産農家からの買上価格が決まるが、価格は1999年に国際価格協定が破綻してから30年前に戻ってしまった。
エチオピアでは、生産農家には1kg当たり1ブル程度(1ブルは約20円)が支払われる。西欧社会ではコーヒー1杯25ブル。1kgで80杯とれるから2000ブルになる、という説明がされる。生産原価は2000分の1ということになる。せめて1kg当たり5ブルにしてほしいとの生産農家の切実な声が取り上げられる。
生産農家は栄養のある食品と水が取れていない。飢餓の子どもを収容する栄養治療センターの模様も紹介される。フェアトレードで生産農家の協同組合に資金が貯まった。しかし、学校を建てるにはまだ足りないので、もう少し貯まるまで待とうという相談の場面がある。学校は、貧困から抜け出し他に職業を得るための必須の社会インフラである。
コロンビアのコーヒー情報も紹介されるが、生産者からの買上価格は1ポンド当たり63セント、生産コストは90セントであるという(フェアトレード認証の価格基準は1ポンド当たり1ドル25~26セント)。「消費者がフェアトレードを求めれば社会が変わる。フェアトレードを求めてほしい。」との協同組合理事長のアピールで映画は終わる。
2. コーヒーの認証制度
コーヒーには、オーガニック、フェアトレード、グッドインサイド、コンサーベーション、バードフレンドリー、レインフォレスト・アライアンスと6種類の認証制度があり、ロゴマークがある。慣行レベル栽培に比べ環境・生活・労働などの基準が設定されている。認証対象は農産物のすべて、途上国生産食品のすべて、コーヒーのみとさまざまである。
(1)オーガニック・コーヒー(有機珈琲)
途上国生産の有機食品のなかでも、コーヒーはバナナと並んで最も普及している。日本では有機JAS法にもとづく認証制度があり、輸入食品も含まれる。有機農産物・有機畜産物については、FAOとWHOの合同委員会である「コーデックス委員会」がガイドラインを示しており、これを受けて日本の制度ができた。認証を受けないと「オーガニック」や「有機」と称することはできない。
各国に認証制度があり、例えばドイツが有機農産物比率を2020年に20%にするというように、目標設定をしている国も多い。認証基準の趣旨は農業の自然循環であり、化学合成農薬や化学肥料の使用は禁止され、さらに食品添加物基準や管理基準がある。消費者には、自然循環という環境側面とともに安全側面が強くイメージされている。
(2)フェアトレード・コーヒー
不利な立場にある途上国の小規模生産者や労働者に最低買入価格や奨励金を保証し、長期的で安定した契約により学校・病院などの社会的インフラ整備を可能にし、生活と労働の改善、農薬基準による環境保全を図る。
ラベル制度は食品にのみあり、コーヒー、紅茶、バナナ、チョコレートの普及度が高い。オーガニックと異なり認証制度の排他的拘束力はなく、自由にフェアトレードと謳うことができる。
認証制度の伴わないフェアトレードとしての民衆交易も行われているが、運動から産業に発展したといわれ、その過程でのラベル制度の効果は大きい。
認証団体:国際フェアトレードラベル機構(FLOI)(本部ドイツ・ボン)
(3)グッドインサイド・コーヒー
社会、環境に対し責任をもった生産・供給・調達のための国際認証プログラムであり、生産のみならず製品ライフサイクルをチェックしている。オンライン・トレーサビリティ・システム、社会、環境、商慣習を網羅した農園管理基準、第三者機関による定期的な農園の監査を特徴とする。
認証団体:UTZCIRTIFIED‘GoodInside’(オランダ・アムステルダム)
(4)コンサーベーション・コーヒー
コンサーベーション・インターナショナル(CI)は、生物多様性が豊かでありながら破壊の危機にさらされている世界34か所の地域を指定し、コーヒー生産地の環境と人々の暮らしを守るため、コーヒー農家とともに生産、加工、流通の全段階で持続可能な発展を目指し活動している。
コーヒーには、熱帯林を伐採してコーヒー園を造成するのではなく、「熱帯林の木陰で育ったコーヒー(shadegrowncoffee)」という基準内容がある。スターバックス・コーヒーはCIと連携し、このコーヒーを扱っている。スターバックスは、販売するコーヒーのうち1品目はフェアトレード・コーヒー、1品目はシェイド・グロウン・コーヒーであり、取り扱う全商品にシェイド・グロウンの原料を使用している。
認証団体:コンサーベーション・インターナショナル(CI)(米国・バージニア州)
(5)バードフレンドリー・コーヒー
多種多様なコーヒー園を調査し、2つの基準を設定した。1つは有機栽培証明書を持つこと。もう1つはバードフレンドリーな鳥の生息地を確保する独自のシェイド・グロウン基準である。
認証団体:スミソニアン渡り鳥センター(米国・ワシントンDC)
(6)レインフォレスト・アライアンス・コーヒー
コーヒー農園は、森林を守り、川や土や野性生物を保全し、労働者に対して敬意を表し、まともな額の賃金を払い、作業に必要なものを与え、教育や医療の機会を提供することが必要であるとしている。
認証団体:レインフォレスト・アライアンス(米国・ニューヨーク州)
3.カーボンフットプリント・コーヒー
「カーボンフットプリント」は、地球温暖化防止に特化したラベル制度である。現在、日本でも表示制度が検討されており、ロゴマークも決まった。英国などでは、すでに表示販売がされている。食品や日用品主体に普及が考えられているが、コーヒーに導入されるかどうかは製造・販売社の意向次第である。
温暖化だけでは問題ありとの見解もあり、「オーガニック」プラス「フェアトレード」にさらにプラスして、「カーボンフットプリント表示」でCO2排出量が少ないという優位性が評価できるようなコーヒーが登場すれば、ますます市場は賑やかに(表示もにぎやかに)なるであろう。
注:オーガニックを除く認証制度の詳細は、「サステイナブルコーヒー協会」のホームページを参照してください。
(筆:緑川)

