映画に観るCSR(その1)
映画をCSR(企業の社会的責任)の観点から見ると、多様な題材が発見できる。「ZAITEN」2009年 6月臨時増刊号の特集「CSR最前線」のなかにCSR関連DVDの紹介記事があった。DVDレンタル店TSUTAYAの推薦であり、国連グローバルコンパクトの4分野を中心に、人権2本、労働1本、環境5本、腐敗防止7本、その他2本の18本を選んでいるが、テーマの主体は必ずしも企業ではなく政策課題や自然保護、政治の腐敗もある。環境では「不都合な真実」や「アース」が入っている。
そこで、私が推奨するCSR関連映画を紹介してみたい。
「エリン・ブロコビッチ」(2000年、米国)
主演女優はラブ・ストーリーのヒット作「プリティ・ウーマン」などで知られるジュリア・ロバーツ。次第に本気になっていく弁護士との掛け合いも面白い。事実に忠実であるとの評価があるが、胸の隆起をこれ見よがしに見せ、ミニスカートで事務所内を闊歩して職場の同僚らのひんしゅくを買う彼女の姿はどこまで事実かの解説はない。ジュリア・ロバーツはこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞した。
「スタンドアップ」(2007年、米国)
監督も女性でニキ・カーロ。主演女優シャーリーズ・セロンは「モンスター」でアカデミー主演女優賞を受賞。この映画でも同賞にノミネートされた。南アフリカの女性への暴力撲滅活動に寄付を続けているが、今女性で初めての国連平和大使に任命されている。
この2本とも主人公の女性の生活振りも描かれるが、ともにシングルマザーであるのが面白い。エリンの方は雇い主の弁護士に給料の値上げを要求する。その何倍ものボーナスをもらうことになるが、特定の仕事に対していくらくれと上司や経営者に求める場面は米国契約社会の特質をよく示しているのか、アメリカ映画でときどき見られる。最近のDVDには、映画本編だけでなくプラスアルファ映像がついていたりするが、実在のエリンや弁護士が登場したり、スタンドアップでは鉱山会社の女性の現社長が様変わりした会社を語ったりのインタビューもある。
「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか」
全米第7位の売上高13兆円のエネルギー関連企業。負債総額2兆円、解雇者2万人。米国社会は善も悪もスケールが大きいという実感である。
「見わたすかぎり人生」(2008年)
「見わたすかぎり人生」(2008年)はさるGW期間の朝日新聞社主催のイタリア映画祭で上映された。テーマは非正規社員問題である。大学哲学科を卒業したけれど出版社の就活に失敗、就職できない女性の悲哀を描いている。ベビーシッターもしながら浄水器など販売のコールセンターで働く生活体験とその会社や周囲の人々の「人生」を描く。イタリア映画では悲劇をコメディタッチで描くことが多いが、結末には僅かながら救いがある。終映のとき拍手も起こった。期間中2回上映の前売券が売り切れるほど人気があったが、DVD発売があるかもしれない。
「やればできるさ」(2008年)
「やればできるさ」(2008年)もイタリア映画祭上映作品である。鑑賞はできなかったが、イタリアで精神病院が廃止され、元精神病患者の働く職場に転勤になった男性の物語である。日本でも2年ほど前から身体障害者・知的障害者のほか精神障害者も障害者雇用の対象になったが、精神病院廃止という、社会から隔離した「保護」から「就労」で支えるという世界の流れの先端をいくイタリアとはどんな国なのかに新たな関心が湧いた。スローフード、マフィア、ローマ・カトリックがイタリアのイメージである。さらに有機農産物も世界一。長寿国であり男性は日本と並んで世界第3位という側面もあるが、CSRではどうであろうか。
まとめ
CSRを意識すると関連映画は結構見つかる。小説にも目を配り、邦画からも探してみたい。
2010年にはISO26000が発行され、企業だけでなく、幅広い組織の「社会的責任」が課題になる。政府による規制や政策内容は対象ではないが、市民からは政府の不正には一層厳しい目が向けられるであろう。また、法令を順守すればそれでよいということにはならないので、その社会性や情報開示にも一層関心を高める必要があるだろう。
緑川芳樹

